「ねこのふわふわ」
– 約束 –
猫のふわふわは、旅する猫です。
或る日のこと、
猫のふわふわが、町の中の、石畳の、小さな路地を、ゆっくりと歩いていると、
向こうからペトロさんが杖をつきながら歩いてきました。
「こんにちは、聖ペトロさま!」
猫のふわふわは、ちょっと緊張して、せいいっぱいのあいさつをします。
ペトロさんは、
「こんにちは、猫のふわふわ。元気ですか? 今日は、どこに行くの?」
と猫のふわふわに、尋ねました。
これと言って行くあてのなかった猫のふわふわは、
「いえ、どこにも。あの、ペトロさんが必要だと言われるのであれば、お供しますけど」
と答えてしまいました!
ペトロさんは笑って、それから、少し考え込んで、猫のふわふわを、じっと見て、
「では、猫のふわふわ、あなたに
お願いがあります。
あなたが出会う人で、あなたが、この人はさみしそうだな、と思う人の足元で、そっと少しだけ、寄りかかって、そして、
丸くなってあげてください」
猫のふわふわは、りっぱな耳をぴんと立てて、自慢のひげをふるわせると、
「はい」
と答えました。
それから、猫のふわふわは、ペトロさんに少しだけ、首の下と、耳のうしろをなぜてもらい、
「さようなら」
と言って、ペトロさんと別れました。
(2007年9月9日の礼拝での「こどもの祝福」より)