「ねこのふわふわ」
– たより –
猫のふわふわは、旅する猫です。
或る日のこと、
猫のふわふわが、砂漠の中の小さなオアシスの、小さな井戸で、
静かに水を飲んでいると、
そこに、
きつねのルナールが、
やっぱり水を飲むために、やって来ました。
きつねのルナールは、言います。
「ちょうどいい。あなたにたよりがあります」
どんなたより? 猫のふわふわは、たずねました。
「そう、
猫のふわふわ、
あなたの、
ふわふわしたあたたかさと優しさとを、
必要としています。
戻って来てください。
って」
猫のふわふわは、
水を飲むのを、ちょっとやめて、
耳のうしろを少し撫でて、
「戻ることはできる。けれど、時間がかかるかなぁ」
とつぶやきました。
きつねのルナールは、そう、と言っただけで水を飲んでいます。
ふたりの話しを聞いていた、
井戸の中の、小さなさかなが、
「いいなぁ、他の人にたよりにされるのは」
と、つぶやきました。
すると、猫のふわふわと、きつねのルナールは、顔をみあわせ、
二人で、ふふ、っと笑うと、
声を揃えていいました。
「一番、たよりにされているのは、君だよ」
ちいさなさかなは、
ちょっと驚いて、
ピチャっとはねると、
あとはゆっくりと井戸の中を泳いでいます。
(2007年7月22日の礼拝での「こどもの祝福」より)