ヤコブのおはなし
採用されなかった《夏期学校》の劇台本
(第1の場)レンズ豆(創世記25章27-34節)
ナレーター ある日の夕方、ヤコブはレンズ豆の煮物を作っていました。
ちなみに、レシピは次のとおりです。
まず、レンズ豆を収穫します。その際に、虫に食われていたり、割れていたりするのを除きます。
つぎに、レンズ豆をきれいな水で洗います。水に入れた時に、浮いてきた豆は、やはり除きます。
そして、一晩、水につけておきます。
朝になったら、鍋に豆を移し、ゆっくり、ことことと、煮ます。
その時、豆のこと以外、考えてはいけません。
レンズ豆は、赤い豆なので、ヤコブの頭の中は「赤いもの」という意味の「アドム」という言葉だらけになります。
ヤコブ アドム、アドム、アドム、アドム、(無限に)…
ナレーター ヤコブの頭の中のレンズ豆と、鍋の中のレンズ豆とが程よく煮えてきたら、岩塩を削って味を整えます。
ヤコブ アドム、アドム、アドム、アドム、(無限に)…
ナレーター おっと、草原からお兄さんのエサウが帰ってきました。
エサウ ヤコブ、お前は朝から何をしているんだ? その鍋の中のアドムは何だ?
ヤコブ アドム、アドム、アドム、アドム、エドム、エドム、エドム(無限に)…
エサウ おいヤコブ、お兄さんの私を、今、あだ名の「エドム」で呼び捨てにしたな?
ヤコブ アドム、エドム、アドム、エドム、アドム、エドム(無限に)…
エサウ そう何度も人のことを呼ぶなよ。ああ、いいにおいだ。ヤコブ、わたしは疲れきっているんだ、その赤いもの、そこの赤いものを食べさせておくれ。
ヤコブ アドム、エドム、アドム、あ、お兄さん、お帰りなさい。すみません、レンズ豆を煮ている時には、レンズ豆のことしか考えちゃいけないものですから、お兄さんが帰ってきたのに気がつきませんでした。アドム、エドム、アドム、エドム、えーとエサウお兄さん、何か言いましたか?
エサウ だから、その赤いもの、そこの赤いものを食べさせておくれ、と言ったのだよ、私は疲れきっているんでね。
ヤコブ いいですよ。そろそろ美味しく煮えてきたところです。ところで、このレンズ豆の煮物にパンと美味しいハーブティーをおつけしますが、いったい、何と交換しますか?
エサウ 交換したくても、今日は何もとれなかったから、交換するものを持っていないんだ。次に倍にして返すからさ、その赤いもの、そこの赤いものを食べさせておくれ。私は疲れきっているんだよ。
ヤコブ じゃあお兄さん、お兄さんの長子の権利を譲ってください、それと交換しましょう。
エサウ 私の持っている長子の権利? そんなものでいいのか? 食べられないぞ?
ヤコブ 食べられなくてもいいです。お兄さんの長子の権利を譲ってください。今すぐ、譲ると誓ってください。
エサウ ああ、もうおなかがすいて死にそうだ。誓うよ。長子の権利は、ヤコブに譲った。
ヤコブ では、私もレンズ豆の煮物にパンと美味しいハーブティーをつけてお兄さんに譲ります。
エサウ ありがとう。ではいただくことにしよう。いただきまーす。
ナレーター エサウは、レンズ豆の煮物を一鍋と、パンと、ハーブティーとを美味しそうに、食べていますねぇ。あ、食べ終わりました。「ごちそうさま」ってヤコブに言っています。うわっ、手の甲で口の回りを拭いました。あっ、その手の甲もなめています。「じゃあ、またあした。おやすみなさい」なんて言っています。あっ、行ってしまいました。
・ 今年のCS夏期学校(7/22(土)13:30-19:00)は、「イエスさまの光を映して – ヤコブ物語から – 」と題してもたれました。人数は決して多くはありませんでしたが、楽しい、充実したひと時でした。
・ なお、テーマは「季刊教師の友」7月30日の説教例題から採用されました。7月の「季刊教師の友」の教案がヤコブであるのにあわせて、夏期学校のプログラムは、組み立てられました。
・ 掲載の台本は、不採用になったものです。実際には、楽しく体験できる7場ものの「ヤコブ物語り」が演じられました。