余yoteki滴 2016年8月21日

「ねこのふわふわ」

– 約束 –

 

猫のふわふわは、旅する猫です。

或る日のこと、

猫のふわふわが、町の中の、石畳の、小さな路地を、ゆっくりと歩いていると、

向こうからペトロさんが杖をつきながら歩いてきました。

 

「こんにちは、聖ペトロさま!」

 

猫のふわふわは、ちょっと緊張して、せいいっぱいのあいさつをします。

ペトロさんは、

 

「こんにちは、猫のふわふわ。元気ですか? 今日は、どこに行くの?」

 

と猫のふわふわに、尋ねました。

これと言って行くあてのなかった猫のふわふわは、

 

「いえ、どこにも。あの、ペトロさんが必要だと言われるのであれば、お供しますけど」

 

と答えてしまいました!

ペトロさんは笑って、それから、少し考え込んで、猫のふわふわを、じっと見て、

 

「では、猫のふわふわ、あなたに

お願いがあります。

あなたが出会う人で、あなたが、この人はさみしそうだな、と思う人の足元で、そっと少しだけ、寄りかかって、そして、

丸くなってあげてください」

 

猫のふわふわは、りっぱな耳をぴんと立てて、自慢のひげをふるわせると、

 

「はい」

 

と答えました。

それから、猫のふわふわは、ペトロさんに少しだけ、首の下と、耳のうしろをなぜてもらい、

 

「さようなら」

 

と言って、ペトロさんと別れました。

 

(2007年9月9日の礼拝での「こどもの祝福」より)