余滴(2009年2月15日)

「教会暦・行事暦から」(C-09-02)
灰の水曜日 – 2月25日(移動祝日) –
「富は,天に積みなさい」
(マタイによる福音書 6 章 20 節)

「灰の水曜日」(大斎始日)から,四旬節(「レント」,「受難節」,「大斎節」)です。「四旬節」とは,その期間の及ぶ範囲(主日を除く40日間)のことを,「受難節」とは,主のご受難を覚える,と言うことを中心的に考える言い方です。また,「大斎節」とは,主のご受難を覚える私たちの態度です。この3つの要素を併せ持つ時として,「レント」を覚え,守りたいと思います。
歴史的には,4世紀以降,洗礼志願者が過ごす最後の準備の時節としての,復活祭前の「40日間」(クワドラゲシマ)がその起源です。ですが,成人の洗礼者が皆無となった中世以降,特に「大罪」を犯して教会共同体の聖餐の交わりを絶たれた人たちが,悔い改めて教会に復帰するための悔悛の期間ともなりました。
「40」という数字(日数,年数)は,聖書の中では,象徴的な数字(日数,年数)として表れます。ノアの洪水(創世記7:4以下)は,40日間続きますし,モーセはシナイ山に40日間留まります(出エジプト24:18,34:28)。他にも,出エジプトの民の荒野での期間は,40年間(ヨシュア5:6)ですし,エリヤはホレブ山に40日間かけて登ります(列王記(上)19:8)。新約では,イエスさまは40日40夜荒野で誘惑をお受けになります(マルコ1:13)。
これらの記事から,「40」は,その期間の時間的な長さではなく,その数字のうちに含有される精神的長さ(内容)を指し示している,と考えられてきました。
「灰の水曜日」には,その前の年の「棕櫚の主日(枝の主日)」に用いた棕櫚の枝を焼いた灰を用いて,額に十字のしるしをつけ,悔い改めと主のご受難に思いを馳せる40日をはじめます(ですから「大斎始日」とも言います)。そして,すべてをご存知の主に,悔い改めた心をもって仕え,主の十字架を仰ぎ見る力を与えていただくように祈ります。
2009年の教団「特定行事の聖書日課」は,この日のための聖句として,マタイによる福音書 6 章 16 – 21 節を示しています。イエスさまは,断食について教えられる時,それは,「隠れたところにおられるあなたの父に見ていただきため」(18節)と教えておられます。そして,そのように御父に祈り,御言葉のうちに留まることこそが,“富を天に積む”ということなのだと示されるのです。「富は,天に積みなさい」(20節)と言われる主の御言葉に留まり,主の十字架を思いつつ,この時節を歩みましょう。